“2ヶ月に1人が死ぬ“ ダルトンハイウェイで出会ったトラッカーの話が衝撃すぎた

俺は毎日命懸けさ…フェアバンクスから北極への約800km、絶え間なく緊張感が襲うよ。昨年、俺の友人もこの道で亡くしたよ。

そう語るのはダルトンハイウェイで出会ったトラックドライバー(以降”トラッカー”)のジムである。

ダルトンハイウェイの事故率は凄まじく高い。

そこで僕が見たものはいのちを賭けた道の譲り合いであった。
決して大袈裟な表現ではない。

僕は自転車を趣味にし、生活の足とし、日常から乗っている。
自転車に限らず、道路を利用する全ての人に今一度、「みんなの道をどう利用するか」を考えてもらいたい。
そんなきっかけにこの記事がなれば幸いである。

北の産業道路、ダルトンハイウェイ

ダルトンハイウェイは北極海の油田とその周辺の産業を支えるための産業道路である。
フェアバンクスから北極海までは約800kmある。ただ長距離なばかりではない。獲得標高は8,000mを超える。

獲得標高・・・スタートからゴールまでの上った高さの総計。

いくつも山を超え、幾度となくアップダウンが繰り返される。
そしてルートの大部分が北極圏にあり、9割くらいは未舗装路。しかも舗装がボコボコの荒れた未舗装区間がとても多い。
そんな過酷な道を大型トレーラーが走る。それも相当な大きさ。


日本人のほとんどは見たことないであろう巨大なトレーラー。そのほとんどに”oversize”のマークがつけられている。

夏は砂埃で視界が悪い。また、雨もよく降るため未舗装路はあっという間に泥でぬかるんだ道になる。
僕はトレーラーとすれ違う度に砂埃や泥をお見舞いされた。
冬はホワイトアウトし真っ白で何も見えない。

そして氷点下40度を下回ることもある極寒だ。米国史上最低気温マイナス62度はこの道で観測されている。

夏も冬も視界が悪い。

そのためダルトンハイウェイでは昼夜問わず、ライトを照らして走らなければならない。
これはダルトンハイウェイのルールである。

ここで少し僕の話をさせてほしい。

あれは8月20日ブルックス超えを試みた日のこと。
あの日は季節外れの大雪警報が発令されていた。無論、通信手段を持たない僕がそんなこと知るわけはない。僕とすれ違ったトラッカーが心配してくれて教えてくれたのだ。
さらにこう続けた。
「ブリザードが来るぞ。ブルックス超えるなら天候が回復してからにしな。健闘を祈る!じゃあな!」
僕は情報を教えてくれたトラッカーに深々と頭を下げ、彼のトラックが見えなくなるまで見送った。

彼の忠告を無視し先を急いだ僕はいよいよブルックス超えを図る。

本当に寒く、自転車を前に押すのも厳しいくらいの向い風だった。しかもただの強風ではない。雪…というか、みぞれを叩きつけてくるかのような風であった。せめてなんとか写真を1枚は残そうと思い、写真を撮影した。

この後、更に吹雪が酷くなり、写真を撮る余裕はなくなった。
僕のSNSではブリザードの写真として上の写真を紹介しているが、実際のブリザードを撮影するなんて不可能である。

風速は15mを超えているし、三脚にカメラをセットしようものなら倒れてしまう。というか、人間すらもまともに立ってられない。ましてや自転車を押して歩くなどとても厳しい状況だった。

風が強く進めないときは、しゃがんで体を小さくし、体温が奪われるのを避け、回復に努めた。進めそうな時には一気に進んだ。

長くなってしまったが、僕の話をしたのは、ダルトンハイウェイの過酷さをよりリアルに伝えたかったからだ。

これは8月の出来事である

この道を冬に走るとき、どれだけ過酷なのだろう。

トラッカーの彼らは仕事としてこの道を走っている。それゆえ、季節、天候を問わずこの道を走らなければならない。非常にリスクのある仕事だ。

自転車でダルトンハイウェイを走ってきた僕は終始、この道の路面状況を全身で感じながら走ってきたわけだが、本当にひどい。トラッカーの事故が多いのも納得。
だから、”僕もトラッカーの邪魔にならないように気をつけて走ろう”、最初はその程度に考えていた。

勿論この過酷な道を職場にするトラッカーに対して敬意を払って走ってきた。
しかし今思えば、まだまだ意識が低かった。
ダルトンハイウェイでトラッカーをしているジムと出会って僕の意識は変わった。

2ヶ月に1人が死ぬ酷道

ジムとの出会いは僕が休憩しているときだった。
トラッカーの彼は立小便をするためにトラックを停めた。
彼の方から僕に話しかけてきた。
”Hi. How are you doing?”
それをきっかけに少し会話をしたが、彼から聞くリアルなトラッカーの仕事は本当に大変なものであった。

実はダルトンハイウェイで仕事をしている方と会話したのはジムだけではない。だからジム以外のトラッカーに教わった内容で補足しつつ、彼らの仕事を紹介する。

ダルトンハイウェイが全線開通して2019年で33年を迎える。
全線開通して以来、トラッカーはおおよそ273人亡くなったという。
アバウトに計算すると2ヶ月に1人亡くなる計算である。
これを多いと思うかどうかはあなた次第だが、無事にトレーラーを往復させることがどれだけリスキーかがわかる。

ジムをはじめとしたトラッカー達には補償とかそういうのはない。
しかし、ハイリスクゆえのハイリターンともいえる。
彼らはダルトンハイウェイの片道を2日かけて運転することで、$1,000(約11万円)もの大金を得ることができるという。

しかし、ただの800kmではない。ガタガタの悪路だ。
下り坂で大量の荷物を載せたトレーラーを運転するのは計り知れない恐怖だろう。

アティガン峠周辺ブルックス山脈は本当にトラッカーらにとって恐怖だろうと思う。
横転すればたちまち崖の下、と思われる道が続く区間だからだ。

ここを季節問わず、天候問わず走っているトラッカーには頭が自然と下がる。

”Be safe!”
(お気をつけて)

見えない相手を愛せ。

ダルトンハイウェイの事故の多さやトラッカーのリアルを聞いて、僕は色々なことを思った。

特に強く思ったのは、この道を走るときは彼らに対して最大限の敬意を払うべきだということ。

ダルトンハイウェイのトラッカー達は僕を大きく避けて運転してくれた。
勿論例外もあるが、ほとんどのトラッカーは大袈裟に避けてくれた。
最初は
「そんなに避けなくてもいいのに。邪魔してごめんな。」
くらいだった。

しかし、ジムの話とダルトンハイウェイの事故の現状を聞いてしまってからは、命をかけた道の譲り合いに心から感謝した。

あのガタガタの未舗装路で、しかも道幅の狭い山岳エリアで僕を大きく避けてくれたトラッカーは、僕を避けたせいで事故るというリスクも抱えている。
普通に走るだけでも2ヶ月に1人亡くなる道だ。

トラッカー達にとって、事故はもはや他人事ではない。

この仕事に出勤するたびに、一体どれほどの緊張感を味わっているのだろうか?

僕には想像すらもできない。

そんな中、ダルトンハイウェイにチャレンジする自転車乗りが増加している。

ダルトンハイウェイの一般開通より前の時代、彼らは道だけを注意していればよかった。
しかし、僕のような自転車野郎がノコノコやってくる。
ぶっちゃけ自転車によるダルトン走破挑戦している人を快く思っていない人もいるだろう。
ジムもその1人だ。

ジムが僕ら自転車乗りをよく思っていない。
ということを知ったとき、正直気まずく感じたし申し訳なさも感じた。

しかし彼は申し訳なさそうにする僕にこう告げた。

※僕が聞き取れた部分のみの意訳です。

「謝らないで。一般開通された以上、この道はみんなのものだ。しかし、僕らが非常に危険と隣り合わせであることを忘れないでほしい。だから極力僕らのトレーラーを見つけたら、大きく避けて。
道が狭いなら、自転車から降りて、避けれるとこまで避けて。そして自らの存在をアピールして。
僕は君に見えない君の家族を見ている。君を殺せば君の家族が悲しむ。そして僕も、僕の家族も悲しむ。だから僕はたとえ道が狭くても、自分のトレーラーがでっかくても、避けれる限界まで君らを避けるよ。
僕らだけの問題ではない。君もそれをよく理解して走ってくれ。」

みたいな内容だった。

彼はもっと多くのことを伝えてくれたのだろうが、全ては聞き取れなかった。申し訳ない…

彼と話して実感したことは、ダルトンハイウェイ では「命を賭けて、道の譲り合いをしている」ということだ。

道路を利用する者として

上述したような経験を経て、僕は今まで以上にすれ違うトラッカー全てに敬意と愛を持って、道を譲るようにした。手を振ってくれる者には大袈裟に手を振り返した。また、自分からも手を振るようにもなった。
最近日本では煽り運転をはじめ危険な運転がよく行われている。
しかし、なんと器の小さいことか。

ダルトンハイウェイのトラッカー達には常に命がかかっている。
そんな中でも皆、道の譲り合いを当たり前にしていた。

僕はブルックス山脈でトラッカー達のやりとりを見た。

それはブルックス山脈の狭い道路での譲り合い。
大型トレーラーが2台すれ違うスペースはない。
登ってきていたトレーラーが道の広いとこまでバックしていた。

このホワイトアウトした状況でバック。
それも超超大きなトレーラーをバックさせるのだ。
しかも急な斜面で。
求められる運転技術は相当高い。

そして2台はすれ違った。
その際に彼らは笑顔でジェスチャーを行い、挨拶を交わしていた。

僕はその一部始終を見ていた。

なんとなく感動した。

きっとジムの話を聞いていたからだろう。

目の前で命をかけた道の譲り合いが行われた。

自転車を愛する者として、また1人の道路の利用者としてあの時の気持ちや感覚を忘れたくない。忘れてはならない。

事故は注意していても起こることがある。

だからこそ皆が最大限に注意をし、ルールを守り、そして目の前の人に優しさを持って走ることが必要なのだ。

長々と書いたが、どうかこちらをお読みになった皆様にも今一度道路の利用の仕方を見直してほしい。
どんなに小さなことでもいい。
停止線を100%守るとか、踏切は一時停止して窓を開けて音を確認するとか。小さな交差点でも信号を守るとか。発車するときに周りを確認するとか。無理な車線変更をしないとか。
自動車学校に通っていた時の気持ちを思い出してほしい。
(自動車学校通ったことない僕が偉そうにすみません。車の免許持ってません。取ろうとしたことすらありません。)

みんなで安全に道を利用しましょう。

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